こんにちは。
ピアノ講師の“やまもりのくま”です♪
ピアノ初心者の方に向けて
楽譜の読み方を解説しています。
これまでの「音の高さの読み方」や「加線のある音符の読み方」で、
普段私たちが目にする書き方で書かれた白い鍵盤の音は、
すべて読めるようになっています(^^)
(何だか含みのある言い方ですが、
このページを最後まで読み終えたときには、この意味がご理解いただけると思います。)
さて、今日は音の高さを読むときに「難しい」と感じてしまう、
あの黒い鍵盤たちの読み方について。
楽譜の記号で言うと
#(シャープ)や♭(フラット)、♮(ナチュラル)などの変化記号のお話です。
あなたのその楽譜にもありませんか?
もしかして、それらの記号が苦手だったりしますか?
でも、もう大丈夫。
ここにたどり着いていただいたからには、
#も♭も♮もお任せください!!
あなたのために、できるだけ分かりやすくお伝えします。
きっとあなたの楽譜に対する「?」が
「!」に変わることをご実感いただけると思います(^^)
このページの目次
上がる? 下がる?
小難しい話を始める前に、
音楽で使われる「言葉」についてご説明します。
これ、音楽をしている人は自然と使っていて
わざわざ取り上げて話すことでもない、
というか自然過ぎて気が付いていないポイントでもあります。
私が子どもたちにピアノを教え始めて気が付いたのは、
この「言葉」をきちんと理解してもらっていないと
話が通じない、ということ。
もちろん、子どもだから言葉をよく分かっていなかったのもあるのですが、
・音楽で使う言葉
・それらが楽譜や鍵盤ではどのような位置関係にあたるか
を、きちんと理解していないと、これからの話がさらに難しく感じます。
どういうことかと言うと、
一般的に、音の高さは「高い」「低い」で表します。
今までのページでも「音を高くする」や「低い音」という書き方をしてきました。
これを、音楽ではよく
音の高さを「上げる」「下げる」と表現します。
もちろん、「高くする=上げる」「低くする=下げる」です。
音の高さの読み方でもお話しましたが、
この音の高さの高低を楽譜で表すと
五線譜の上の方が高く(上がっている)、下の方が低い音(下がっている)でした。
更に、ピアノの鍵盤上ではどうなっているかと言うと、
右に行くほど音は高くなり(上がり)、
左に行くほど音は低くなります(下がる)。
まとめるとこんな感じです。
この図のように、大譜表の上段がト音記号で、下段がヘ音記号の場合、
片手ずつ(五線譜ごと)でももちろんですが
大譜表全体としても上の方が音が高く、下の方が低くなります。
大人にとっては
音の高低と上下は感覚的に身についていることが多いですが、
ここで改めて、
「言葉と楽譜と鍵盤」を一致させる必要があります。
これのどこが難しいのかと言うと、
楽譜や言葉では上下や高低、つまり縦の感覚で表すのに、
ピアノの鍵盤では左右に変わること。
ここが感覚として一致しにくいのです。
鍵盤では実際に空間を上下するわけではないですからね…。
下がる=左へ
これをまず覚えておいてください。
本当の隣?
さて、前のページでお話した「オクターブ」。
高さの違う、同じドレミの音でしたね。
音楽の歴史の中で、
音と音の平均的な美しい響きを追い求めていくうちに
この「1オクターブ」の間を、みな大体同じ間隔で
12個に分けるようになりました。
具体的には、ドレミファソラシドの8音の中に
- ドとレの間
- レとミの間
- ファとソの間
- ソとラの間
- ラとシの間
の5音を加えたものです。
そのまま足すと全部で13音ですが、音と音との間隔は12ですよね。
で、この「間の音」というのが、黒い鍵盤の音になります。
ピアノの鍵盤をパッと見たときは
白い鍵盤同士が一番近い隣の音のように思えてしまいますが、
その間には黒い鍵盤が挟まっている箇所があります。
その黒い鍵盤も含めた「一番近い隣の音」との関係性を
音楽の用語で「半音(はんおん)」と言います。
ちなみに、ミとファの間、そしてシとドの間には黒い鍵盤がありませんが、
これらの場合、ミとファの関係 及び シとドの関係が半音になります。
一番近いお隣さんですからね。
1オクターブと言うのは、この「半音」が12個集まったものと言えます。
#(シャープ)とは
さて、ここからが本題です。
黒い鍵盤の音を、楽譜ではどう表すのか。
先に申し上げておきたいのは、
特に黒い鍵盤の音の表し方は流動的だということ。
実はこの黒い鍵盤の音は、
白い鍵盤のように固有の名前を持っているわけではなく、
「ドを半音上げた音」や「ミを半音下げた音」というように
白い鍵盤の音を基準に表します。
先ほど「ドとレの間の音」といった書き方をしたのはそのためです。
それでは黒い鍵盤を表す記号の1つ、半音上げる記号、#(シャープ)から見ていきます。
音符に付ける場合は“たま”の左側に書いて、その音符の半音上の音を弾くことを意味します。
この楽譜だと、書いてある音符はソの音。
ト音記号の示すソの音ですね。
#は半音「上げる」記号ですから、鍵盤で気にするのはソよりも右側。
「ソ」の右隣りの「ラ」との間には黒い鍵盤がありますから、
ソとその黒い鍵盤が「半音」の関係になります。
ということで、先ほどの楽譜は
ソを半音上げた(一番近い右側の)この音を弾きます。
「ソのシャープ」と読み、ドレミで書くときは「ソ#」と書きます。
これが#が付いた音の高さの考え方です。
半音(右へ)上がる、です。
また、#は真ん中の□が音符の“たま”の位置にきます。
特に一度にたくさん書いてある場合は、#のお腹の位置をよく確認してください。
では、#を付けると音の高さがどう変わるのか、
白い鍵盤の音と聴き比べてみます。
いかがでしたか?
想像していたような音だったでしょうか?
♭(フラット)とは
次は半音下げる記号、♭(フラット)についてです。
これも、音符に付ける場合は“たま”の左に書いて、
その音符の半音下の音を弾くことを意味します。
この楽譜だと、書いてある音符は先ほどと同じソの音。
♭は半音「下げる」記号なので、鍵盤で見るべきはソの左側。
ソとファの間には黒い鍵盤がありますから、
ソに♭が付いているということは
半音下げた(一番近い左側の)この音を弾きます。
「ソのフラット」と読み、ドレミで書くときは「ソ♭」と書きます。
これが♭が付いた音の高さの考え方です。
半音(左へ)下げる、です。
また、♭の場合は半円の部分が“たま”の位置にきます。
♭がどの音に付いているのか、よく見て弾く必要があります。
では、こちらも白い鍵盤のシと弾き比べてみます。
https://youtu.be/5igukUJo6qw
#との「動き方の違い」がお分かりいただけたでしょうか?
♮(ナチュラル)とは
最後に、#や♭の付いた音を元に戻す記号、♮(ナチュラル)です。
これも音符に付ける場合は、“たま”の左側に書きます。
元に戻す、というのは「白い鍵盤を弾く」ということ。
この例の場合だと、「ソのナチュラル」、
すなわち白い鍵盤のソを弾きます。
ドレミで書くときは「ソ♮」と書きます。
元々ソに#が付いていたのなら「半音下げて元に戻す」ですし、
ソに♭が付いていたのなら「半音上げて元に戻す」ということになります。
<#から♮に戻す場合>
<♭から♮に戻す場合>
また、ナチュラルも真ん中の□の部分が“たま”の位置です。
何の音を変化させたいのかは、この□の位置で分かります。
ちなみに、この記号が使われるということは
その前に#や♭がどこかに付いていた、ということです。
何も付いていなかった場合には使われません。
#、♭、♮の違い
さて、ここまで3つの記号を見てきましたが、
これら#、♭、♮などは、音の高さを変える記号なので
「変化記号」と呼ばれます。
また、「音の高さの基本的な読み方」のページでもお伝えしていますが、
音符の形や色は、音の高さには関係ありません。
これらの変化記号も同じく、付いている音符の形や色には何の影響も与えません。
“たま”が白でも黒でも、
“ぼう”が上を向いていても下を向いていても、
どっちでもいいんです。
関係あるのは“たま”の位置だけ。
ト音記号の第2線に“たま”があればソ、
そしてそのソに#が付いていれば半音上げ、
♭が付いていれば半音下げます。
#、♭、♮の実際の音の違いはこのようになっています。
https://youtu.be/mj8xHnsZ5P4
別々で聴くより、3つの記号の違いがはっきりとお分かりいただけると思います。
もちろん他の音でも考え方は同じですし、
変化記号はト音記号の楽譜でもヘ音記号の楽譜でも使われます。
また、最初の方で黒い鍵盤のことを
「〇と●の間」の音と表現したように、
1つの黒い鍵盤を「〇の#(〇より半音上)」「●の♭(●より半音下)」と表すことができます。
例えば「ソとラの間の音」は、「ソの#」であり「ラの♭」でもあります。
そして楽譜を読む際に大事なことは、
記号の□や半円の位置を確認するということ。
変化記号が出てきたときは、どの音に付いているかを正しく見る必要があります。
変化記号の2種類の使われ方
さて、#や♭、♮とはどんな記号かを見てきましたが、
これら変化記号の使われ方には2種類あります。
「臨時記号」と「調号(ちょうごう)」です。
頭に「???」が飛び交っていそうですが、
大丈夫(^^)
このまま読み進めていただければ、
少しずつ分かるようになります。
どういうことかと言うと、
#は半音上げる、♭は半音下げる、♮は元に戻すという機能はそのままに、
書かれている場所が変わるのです。
具体的には、
「音符(たま)の左に付けて、直接音の高さを変える場合(臨時記号)」と
「音部記号の右に付けて、間接的に音の高さを変える場合(調号)」があります。
重要なのは、言葉を覚えることではなく
楽譜に書かれた記号たちがどのような意味を持つかを理解するということ。
同じ変化記号でも、書かれている場所によってちょっと意味合いが違います。
1つずつご説明しますね。
「その時だけ」の臨時記号
これは、先ほど#と♭、♮の説明で見ていただいた例のように、
音符の左側に付けて、その音を半音上げたり下げたりする場合です。
他の音には付いていないのに、いきなり出てきて「何この記号!?」と思うやつです。
楽譜にこの子たちがいると、身構えてしまうことがあるかもしれませんね^^;
この臨時記号、名前の通り
「一時的に、その時だけ」使われる記号です。
-
- 臨時記号が付いた音の小節内のみ
- 臨時記号が付いた音とその音より右の、同じ高さの同じ音
- その後同じ音に別の臨時記号が付けば、そちらの方が優先される
- その五線譜のみ
小節というのは、縦線から縦線までの間のこと。
次の小節の音には影響しません。
文字にすると上記のようになるのですが、
あなたの楽譜に臨時記号があった場合、どのように考えたらよいのでしょうか。
例として、下の楽譜の音符たちは
それぞれどの音を弾くのか、ちょっと考えてみてください。
↓番号をクリックすると下にある解答の画像と解説が切り替わります。
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨
【解説】
➀は、何も付いていないので、白い鍵盤のソを弾きます。
ト音記号の示すソですね。気になるのは右側にある♭。ですが、臨時記号は音符の左側に付く決まりなので、➀の右側にある♭はこの音には適用されません。↑一覧に戻る
このようにして、実際の楽譜を読んでいきます。
臨時記号が付いた音は、素直にその記号の意味に従って読めばよいです。
また、臨時記号の効力は、非常に短く部分的であることがお分かりいただけたかと思います。
効力がずーっと続く「調号」
一方、調号はと言うと、
音部記号の右側に付いています。
音部記号とは、ト音記号やヘ音記号のことでしたね(^^)
ここに#や♭が付いている場合は
特に指示がない限り、その曲中ずーっと
#や♭が付いた音を半音変えます。
しかも、高い音も低い音もすべて。
右手の音でも左手の音でも、
とにかく調号が付いている音はすべて変化させます。
-
-
-
- その曲中ずーっと
- 音の高さに関係なく、付いた音(同じドレミの音)はすべて変化させる
- 特別な指示があった場合は、その指示の方が優先される
-
-
「調号」というのは、
「ある音を中心とした明るい(あるいは暗い)曲ですよ」
ということを表している記号なのですが、
この部分については「音の名前」や、前半に出た「半音」などへの深い理解が必要になってくるので、今は考えなくていいと思います。
そういうことを知っているに越したことはないですが、
記号が示す意味さえ知っていれば
本格的な知識がなくてもピアノは弾けます。
音部記号の隣に#や♭が付いていれば、それらの音はすべて変化させる。
これだけ覚えておけば大丈夫です。
また、ピアノで使う大譜表(上下2段の楽譜)の場合、
上段と下段は同じ調号になります。
右手と左手で調号が違うということはありません。
調号における特別な指示
特に指示がない限り、と先ほど言いましたが
今付いている調号が無効となる場合が2つあります。
1.臨時記号が付いた場合
力関係で言うと臨時記号の方が強いです。
調号が基本としてあって(あるいは調号がなくて)、
その上で更に変化させたい音に臨時記号を付ける形になります。
調号が付いている音に臨時記号が付いていた場合、
調号は無効となり臨時記号が有効となります。
どの臨時記号でも、です。
そして臨時記号の効力がなくなれば、調号をまた付けます。
調号として#や♭が付いている音は、
臨時記号の効力が切れても白い鍵盤には戻りません。
2.調号が曲の途中で変わる場合
調号が何もないところから#や♭が付いたり、
元々何個か付いているところから数が減ったり、
はたまた♭系から#系に変わったり・・・と
その変化の仕方は様々ですが、
変わった後は、その新しい調号(右側)に従って読み進めます。
また、調号が変わるときは、縦の二重線が書いてあります。
(この二重線は、曲の区切りを表すものです)
こちらの例で、それぞれ何の音に調号が付いているか、
そしてどのように弾いたらよいのか確認してみてください。
↓番号をクリックすると下にある解答の画像が切り替わります。
調号と臨時記号がある楽譜の読み方
さて、同じ#や♭でも、書いてある場所によって
2種類の使われ方があることをお伝えしました。
臨時記号の欄に見慣れない記号がありますが、
あれらはダブルシャープ、ダブルフラットと言って
それぞれ半音2こ分変化させます。
初級の楽譜ではまず出てこないので、また別の機会にお話ししようと思います。
さて、2つの使われ方についておさらいしたところで、
調号と臨時記号のある楽譜の音の高さを確認してみましょう。
おそらくあなたがお持ちの楽譜は、調号が付いていることの方が多いと思います。
ルールは分かったけれど、「こんな時どうしたらいいの?」の
考え方についてお話しします。
まず、読み始める前に調号を確認します。
この楽譜は調号として#が3つ付いています。
ごちゃっとしていて見にくいですが、左からファとドとソです。
#の□の位置を確認するんでしたね(^^)
基本的にはこの3つの音が出てきたときは、
高さに関係なくシャープを付けます。
右手も左手も、です。
では、そのことをふまえて読んでみます。
以下に正解と解説を載せています。
↓番号をクリックすると下にある解答の画像と解説が切り替わります。
いかがだったでしょうか?
「音の高さ」に関することで一番難しいのはこの「変化記号」なので
ここさえ押さえておけば、音の高さはバッチリです。
個々を見るとすごく複雑に感じますが、
すべて記号の意味や使われ方のルールに従って読んだだけです。
音の高さを知るには“たま”の位置と変化記号(調号と臨時記号)をよく見ること。
あなたがお持ちのその楽譜も、この視点からもう一度確認してみてください(^^)
#、♭、♮のまとめ
それでは、変化記号「#(シャープ)、♭(フラット)、♮(ナチュラル)」の重要なところだけ。
- 鍵盤の一番近い隣の音との関係を「半音(はんおん)」と呼ぶ。
- #は半音上げる(鍵盤では右へ)、♭は半音下げる(左へ)、♮は元に戻す(白い鍵盤に戻す)記号。
- 変化記号には「調号」と「臨時記号」の2種類の使われ方がある
です♪
この知識を元に…
具体的な楽譜の読み方については、こちらで解説しております♪