このページの目次
「・」のある音符の読み方
さて、今日の本題です。
今まで2種類の似たような「・」を見てきましたが、その位置によって全く意味が違うことがわかりました。
上下だと「短く切る」、
右側だと「元の音符の1.5倍伸ばす」。
ではそれを踏まえて、「Happy Birthday to You」の右手の冒頭部分を読んでみたいと思います。
まず、音の高さのおさらいから。
ト音記号の楽譜で下側に加線が1本あるので、最初の2つの音は「真ん中のド」でした。
そして縦線を挟んで右側の音符は、下から2番目の線(=ト音記号の示すソ)から数えて
「(高い)ド」「ラ」「ファ」。
ここまでは問題ないと思います(^^♪
次は音の長さ。
➀のドは“はた”が1本ですから、どうやら八分音符のようです。
この音には「・」がありますね。
その位置は「右」。
ということは、この「・」は「付点」ということになります。
上下ではないですから、スタッカートではありませんね(^^)
ここが大事な見極めのポイントです。
そして➀の音の長さは、付点が付いているので正確には「付点八分音符」となります。
付点の付いた音は、元の音符の1.5倍になりますから、
この付点八分音符は
「八分音符」に、その半分の長さである「十六分音符」を足した長さになります。
次は➁のド。
このドには“はた”が2本あります。
“はた”が2本なので十六分音符です。
この音のように、つながった“はた”の中で1つの音符にだけ“はた”を付け加えるときには、2本目は短く書きます。
“はた”のある音符の書き方は色々ありますが、
その基本は「形」そのものではなく「パーツ」。
なので“たま”が黒くて、“ぼう”があって、“はた”が2本あるこの➁のドの音は、十六分音符です。
縦線の後の「(高い)ド」「ラ」「ファ」の音は、すべて“たま”が黒くて“ぼう”があるので「四分音符」。
ここまでの音の高さ&長さがわかったところで、じゃあ実際にはどう弾いたらいいのでしょうか。
付点音符の捉え方
先ほどの楽譜では「付点八分音符」が出てきました。
付点の付いた音符はすべて「元の音符の1.5倍」ですが、そう言われても音の長さがピンと来ませんよね^^;
ここでは付点音符の長さの捉え方についてお話します。
この1.5倍というのは、元の音符、今回の場合で言えば八分音符を比の「1」と考えている場合。
「比」は相対関係を表しているものなので、たとえ基準となる(比を「1」とする)音符を変えても、その関係性が同じであれば問題ありません。
では、八分音符以外の音符を基準とした場合、付点八分音符の長さはどのように考えられるでしょうか。
2ページ目で出てきた音符の一覧表を思い出していただきたいのですが・・・
八分音符より長い四分音符を「1」とすると、付点八分音符は0.75(3/4)。
・・・ますますわかりにくくなりました(T_T)
では逆に、八分音符より短い十六分音符を「1」とした場合はどうでしょうか。
「付点八分音符」は、「八分音符」+「十六分音符」。
「八分音符」というのは、「十六分音符」2つ分の長さです。
つまり、「付点八分音符」というのは、「十六分音符3つ分」とも言い換えることができます。
これだと、どうでしょうか。
小数点のある数字より、数えやすそうではありませんか?(^^)
またリズムのページでもお話しますが、音符が細かかったり付点が出て来たり、ちょっと「どんなリズムだろう?」と考えてしまうような音符は、その音より短い音符でどのくらい伸ばすのか、と考えます。
音符の形(パーツ)が表しているのは音の長さの「比」。
なのでリズムの理解のためには、その時々に合った音の長さを基準にして考えていきます。
今回のように、付点八分音符と十六分音符の組み合わせであれば、短い方(十六分音符)を「1」とし、長さの比を考えます。
付点八分音符は十六分音符「3」つ分でしたので、付点八分音符:十六分音符=3:1。
このように、音の長さの比が「3:1」になるようなリズムのことを、「付点のリズム」と言います。
そして、この部分を実際に弾くと、このような音とリズムになります。
「付点」が少し身近になったでしょうか?
「付点」の克服法
ここで一度、あなたがお持ちの楽譜を広げてみてください。
「・」がありますか?
このページをここまで読んでいただけたあなたなら、
「・」の位置をよく見ることで「スタッカート」なのか「付点」なのか、もうお分かりいただけていると思います。
まずはそれが「・」を読めるようになるための、大事な大事な第一歩です。
スタッカートは「短く切って弾く」。
これは意外にすぐできます。
練習と、意識の問題です。
私が教えている生徒さんの中には、その点が「スタッカート」だとわかるとほっとした表情をする子がいます。
聞いてみると、「付点だとリズムがよくわからない…」とのこと。
付点は、付く元の音符によって長さが変わるため、わかりにくいようです。
分数や小数も低学年ではわかりません。
そもそも、子どもが「比」というものを習うのは小学校6年生。
「音の長さ」そのものの理解が難しいわけです。
付点が理解しにくいのはある意味当然かなとも思います。
しかし、比や分数、小数などを理解している大人が「付点は難しい」と感じる理由は、
おそらく、理論上「元の音符の1.5倍伸ばす」ということはわかっていても、弾くときにはその考えのままでは弾けない、ということを理解していないため。
更に、付点は中途半端な長さのため、リズムを読むときによく使われる「タン」とか「うん」だけでは、はっきりと伸ばす長さが伝わりにくいものです。
何かの言葉に置き換えようにも、日本語ではっきりと○○○●という3:1になる言葉は・・・何かあるでしょうか。
こじつければできなくもないですが、意外としっくりくる言葉がないのも、このリズムを難しく感じさせている要因の1つかもしれません。
リズムに関しては、リズムがわかる人から直接教えてもらいながら体と頭で覚えていくのが手っ取り早いですが、
それができない場合でも、楽譜や音符のメカニズムを知り、まず頭で理解することが大切です。
先ほどの楽譜で見てきたように、短い音符や休符で何個分になるのか・・・。
この音は○○音符何個分伸ばす、ということがはっきりわかると、どう弾けばいいかがわかるようになります。
試しに、あなたの楽譜の付点音符に「何個分伸ばすのか」を書いてみてください。
これは、私がレッスンで生徒さんにする方法なのですが、
音符の下に「3」や「1」などと書くだけでも、自然と心の中で数を数えながら弾くことができます。
最初はその部分だけを練習してみます。
すると音の長さの「比」が合うようになっていきます。
この「正しい比で弾ける」ということが、正しい音の長さで弾くということになります。
そして最終的には、前後の音とも比を合わせ、全体をまとめていく必要があります。
そうやって練習しながら
何度も楽譜を目で見て、
何度も音を耳で聴いて、
何度も何度も実際に手で弾いて
「付点」の感覚をつかんでいくことが大切です。
付点は音楽に「動き」をもたらします。
付点がわかり弾けるようになる、ということはあなたの演奏がより魅力的になるということ。
ぜひ付点を弾きこなせるようになってほしいと思います(^^)