こんにちは。
ピアノ講師の“やまもりのくま”です♪
ピアノ初心者の方に向けて
楽譜の読み方を解説しています。
音楽は、「音のある時間」と「音のない時間」の組み合わせでできています。
前回お話した「音符」は、「音のある時間」を表す記号でした。
今日お話するのは「休符(きゅうふ)」。
休符とは、「音のない時間」を表す記号です。
「休符」にも色々な長さがあります。
「どのくらい音を出さない時間があるのか」を表しているのが休符です。
名前には「休」とありますが、ただの「休み」ではなく
音楽の流れの中の大切な「間」。
今日はそんな音のない時間の表し方、「休符」についてです。
このページの目次
音符と一緒?
音符と休符、それぞれ記号は違うのですが、
実は考え方は同じ。
その考え方とは「比」。
音符は、音を伸ばす秒数を表す記号ではなく、
相対的な長さを表す記号でした。
休符も同じく、音のない時間の秒数を表す記号ではなく、
相対的な長さを表しています。
これが休符を読む上で一番大切な考え方です。
それではこの考え方を元に、個々の休符を見ていきます。
四分(しぶ)休符
ぐにょぐにょ…としたこの形。
書き方の説明も難しい感じですが、
この形を「四分休符(しぶきゅうふ)」と言います。
ちなみに下から上に向かって書きます。
四分休符の位置は、一般的には第2線をまたぐように最初のカーブを書き始めるのですが、
場合によっては違う高さで書かれることもあります。
休符は全てそうなのですが、
音符のように、書く位置で形が変わることはありません。
高い位置に書いてあっても、低い位置に書いてあってもこの形です。
そして、名前でお気づきかもしれませんが
同じ「四分」の名のつく四分音符と、同じ長さ休む(間を取る)記号です。
音符は音を鳴らす、休符は音を鳴らさないという違いがあるだけで、
基本的な考え方や時間の感覚は同じになります。
今回もこの「四分」休符の比を1として、他の休符の長さを見ていきます。
二分(にぶ)休符
五線に■を乗せた形ですが、
これを「二分休符(にぶきゅうふ)」と言います。
一般的には、第3線の上に■を乗せます。
二分休符も、同じ「二分」のつく
二分音符と同じ長さ分、間を取ります。
ですから、四分休符を1とした場合、二分休符は2の長さになります。
八分(はちぶ)休符
小さな黒い●から書き始めるこの記号を
「八分休符(はちぶきゅうふ)」と言います。
一般的には、第3間に●を書きます。
お分かりの通り、この休符の長さは八分音符と一緒。
四分休符を1とした場合、この休符は半分の長さになります。
全休符
どんどん行きます。
第4線にぶら下がっているこの記号を
「全休符(ぜんきゅうふ)」と言います。
全音符と同じく、他の休符の長さや名前の元となっている休符です。
もちろん全音符と同じ長さ、間を取る記号です。
四分休符を1とした場合、全休符は4。
四分音符と全音符の関係と同じです。
二分休符ととても似ていますが、書かれている位置が違いますね。
この全休符に関しては、2ページ目で「特別な使われ方」についても触れています。
十六分(じゅうろくぶ)休符
最後に「十六分休符(じゅうろくぶきゅうふ)」。
八分休符と似ていますが、書き始めの●の部分が1本多いですね。
音符のときは“はた”の数が増えていきましたが、
休符の場合はこの●の部分の数が増えていきます。
多いほど短い休符です。
16の次は32、64・・・と数が増えていきます。
この十六分休符も、十六分音符と同じ長さ。
だんだんパーツが多くなってきますね。
十六分休符は全休符の16分の1長さ、
四分休符からみると4分の1の長さになります。
5つの休符の長さの違い
さて、ここまで5つの休符を見てきました。
下の図が5つの休符の長さの一覧になります。
長さを示す□の形は、前のページで見た音符の長さの表と同じですね。
特別な休符
今までよく使われる5つの休符を見てきましたが、
ここでは特別な休符を3つご紹介します。
全休符の特別な使われ方
1ページ目で、全休符は四分休符4つ分間をとる記号だとお話しましたが、
それ以外の長さを表すことがあります。
それは、「1小節内すべて休み」。
また「拍と拍子」のページでも少し触れますが、
たとえ何分の何拍子であっても「縦線から縦線までの間すべて休みですよ」ということを表しています。
つまり、
1小節(縦線から縦線まで)が四分音符4つ分の長さである時はもちろんのこと、
そうでない時でも、全休符が書いてあれば1小節内すべて音を出しませんよ、
ということです。
どちらの書き方をしていても同じことを表しています。
今は「なんのこっちゃ」でも大丈夫です(^^)
拍のページでまた詳しくお話ししますね。
何小節も休む場合に使われる休符(長休符)
この記号は、ピアノだけの楽譜ではほとんど見かけないのですが、
他の楽器や歌と合わせる時などに見かけることがあります。
「スコア(総譜)」は演奏するすべての楽器を一緒に表している楽譜でしたが、
その曲のそれぞれの楽器だけの楽譜「パート譜」というものがあります。
そのパート譜でよく見かけるのがこの「長休符(ちょうきゅうふ)」です。
何小節も休みが続くときに、太い横棒と共に休む小節数を書いて表します。
ピアノだけの楽譜で使われることは稀ですが、
色々な楽譜を弾いていくうちに出会う可能性のある休符です。
そのまとまり(楽章)丸々休み
最後の記号は、ピアノだけの楽譜ではまず見かけません。
一つの参考までに。
長い曲になると、いくつかの小さなまとまり(楽章と言います)が集まって1つの曲になっていることがあります。
そのまとまり丸ごと休みのときに使われるのが
『Tacet(タチェット)』。
実際にその時間、演奏会等ではどう過ごすのかと言うと
「ステージ上にはいるけれど、楽器は弾かない」。
これはオーケストラ(管弦楽)やブラスバンド(吹奏楽)など、
多くの楽器が一緒に演奏するようなスタイルのパート譜でよく使われます。
さっきのまとまりは演奏したけど、これは演奏しない、といった時に使われる記号です。
長休符の数字の部分に「TACET」と書かれていたり、
まとまり(楽章)の名前の横に、文字だけで書かれていたりと
表記は色々ありますが、皆同じ意味です。
この頃は、曲の一部分を繰り返し演奏する際に
「1× Tacet」と書いて、
1回目は演奏しないことを表すこともあります。
私がピアノでTacetと言われて思い浮かべるのは・・・「4分33秒」という曲。
ジョン・ケージという方が作曲した、無音の音楽です。
https://youtu.be/JTEFKFiXSx4
全部で3つのまとまり(楽章)があり、そのすべてに“TACET”と書いてあります。
演奏者は、3楽章合わせて4分33秒の間、「無音」を演奏します。
演奏する、というくらいなので、
「無音」であること以外は
普段の演奏の際にする事と同じことをします。
この曲は、演奏する楽器やその組み合わせは任意なので
別にピアノ曲というわけではないのですが、
「無音」をテーマにした曲の中では、一番有名ではないかと思います。
この曲自体は「偶然性」を試みたもの。
作曲家の意図する“曲”としての音以外の・・・
例えば、会場にいるお客さんの咳払いとか、
空調の音とか、自分の鼓動の音・・・など
その時、その場でしか聞こえない「音」との出会いに耳を澄ませてみようよ、という曲。
ケージの思想が色濃く出ており、かなり極端な例ではありますが
このような曲があることからも「音のない時間」の重要さがわかります。
そもそも、「休符」という概念があって初めて存在した曲とも言えます。
休符の捉え方
練習のとき、「休符だから飛ばしていい」と思っておられる方がいます。
休符分を待たず、端折ってしまう。
音符ばかりを大切にして、休符はないがしろにされていることが、本当によくあります。
アカペラで歌を歌っているときでも、休符を待てない。感じていない。
特に曲の最後や、フレーズ(曲の中の小さなまとまり)の終わりにある休符は無視されがちです。
これは技術的なことで言うと
「拍」や「リズム」、「テンポ(速さ)」にも関わってくることですが、
休符を感じていない演奏は焦っているようで、聴いていて心地がよくありません。
「音楽」とは時間芸術です。
うまれた瞬間に消えていく、時間の流れとともにある「音」と「無」の組み合わせです。
音だけでなく、無の時間をどれだけ感じることができるか。
これがあなたの演奏を飛躍的に向上させる、大きなポイントの1つです(^^)