![これは何休符?休符の形と長さについて](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/アイキャッチ休符の長さの比.png)
こんにちは。
ピアノ講師の“やまもりのくま”です♪
ピアノ初心者の方に向けて
楽譜の読み方を解説しています。
音楽は、「音のある時間」と「音のない時間」の組み合わせでできています。
前回お話した「音符」は、「音のある時間」を表す記号でした。
今日お話するのは「休符(きゅうふ)」。
休符とは、「音のない時間」を表す記号です。
「休符」にも色々な長さがあります。
「どのくらい音を出さない時間があるのか」を表しているのが休符です。
名前には「休」とありますが、ただの「休み」ではなく
音楽の流れの中の大切な「間」。
今日はそんな音のない時間の表し方、「休符」についてです。
このページの目次
音符と一緒?
音符と休符、それぞれ記号は違うのですが、
実は考え方は同じ。
その考え方とは「比」。
音符は、音を伸ばす秒数を表す記号ではなく、
相対的な長さを表す記号でした。
休符も同じく、音のない時間の秒数を表す記号ではなく、
相対的な長さを表しています。
これが休符を読む上で一番大切な考え方です。
それではこの考え方を元に、個々の休符を見ていきます。
四分(しぶ)休符
![四分休符](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/四分休符.png)
四分休符
ぐにょぐにょ…としたこの形。
書き方の説明も難しい感じですが、
この形を「四分休符(しぶきゅうふ)」と言います。
ちなみに下から上に向かって書きます。
四分休符の位置は、一般的には第2線をまたぐように最初のカーブを書き始めるのですが、
場合によっては違う高さで書かれることもあります。
休符は全てそうなのですが、
音符のように、書く位置で形が変わることはありません。
高い位置に書いてあっても、低い位置に書いてあってもこの形です。
そして、名前でお気づきかもしれませんが
同じ「四分」の名のつく四分音符と、同じ長さ休む(間を取る)記号です。
音符は音を鳴らす、休符は音を鳴らさないという違いがあるだけで、
基本的な考え方や時間の感覚は同じになります。
今回もこの「四分」休符の比を1として、他の休符の長さを見ていきます。
二分(にぶ)休符
![二分休符](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/二分休符.png)
二分音符
五線に■を乗せた形ですが、
これを「二分休符(にぶきゅうふ)」と言います。
一般的には、第3線の上に■を乗せます。
二分休符も、同じ「二分」のつく
二分音符と同じ長さ分、間を取ります。
ですから、四分休符を1とした場合、二分休符は2の長さになります。
八分(はちぶ)休符
![八分休符](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/八分休符.png)
八分音符
小さな黒い●から書き始めるこの記号を
「八分休符(はちぶきゅうふ)」と言います。
一般的には、第3間に●を書きます。
お分かりの通り、この休符の長さは八分音符と一緒。
四分休符を1とした場合、この休符は半分の長さになります。
全休符
どんどん行きます。
![全休符](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/全休符.png)
全音符
第4線にぶら下がっているこの記号を
「全休符(ぜんきゅうふ)」と言います。
全音符と同じく、他の休符の長さや名前の元となっている休符です。
もちろん全音符と同じ長さ、間を取る記号です。
四分休符を1とした場合、全休符は4。
四分音符と全音符の関係と同じです。
二分休符ととても似ていますが、書かれている位置が違いますね。
この全休符に関しては、2ページ目で「特別な使われ方」についても触れています。
十六分(じゅうろくぶ)休符
最後に「十六分休符(じゅうろくぶきゅうふ)」。
![十六分休符](https://piano-gakufu.com/wp-content/uploads/2019/08/十六分休符.png)
十六分音符
八分休符と似ていますが、書き始めの●の部分が1本多いですね。
音符のときは“はた”の数が増えていきましたが、
休符の場合はこの●の部分の数が増えていきます。
多いほど短い休符です。
16の次は32、64・・・と数が増えていきます。
この十六分休符も、十六分音符と同じ長さ。
だんだんパーツが多くなってきますね。
十六分休符は全休符の16分の1長さ、
四分休符からみると4分の1の長さになります。
5つの休符の長さの違い
さて、ここまで5つの休符を見てきました。
下の図が5つの休符の長さの一覧になります。
長さを示す□の形は、前のページで見た音符の長さの表と同じですね。
特別な休符
今までよく使われる5つの休符を見てきましたが、
ここでは特別な休符を3つご紹介します。
全休符の特別な使われ方
1ページ目で、全休符は四分休符4つ分間をとる記号だとお話しましたが、
それ以外の長さを表すことがあります。
それは、「1小節内すべて休み」。
また「拍と拍子」のページでも少し触れますが、
たとえ何分の何拍子であっても「縦線から縦線までの間すべて休みですよ」ということを表しています。
つまり、
1小節(縦線から縦線まで)が四分音符4つ分の長さである時はもちろんのこと、
そうでない時でも、全休符が書いてあれば1小節内すべて音を出しませんよ、
ということです。
どちらの書き方をしていても同じことを表しています。
今は「なんのこっちゃ」でも大丈夫です(^^)
拍のページでまた詳しくお話ししますね。
何小節も休む場合に使われる休符(長休符)
この記号は、ピアノだけの楽譜ではほとんど見かけないのですが、
他の楽器や歌と合わせる時などに見かけることがあります。
「スコア(総譜)」は演奏するすべての楽器を一緒に表している楽譜でしたが、
その曲のそれぞれの楽器だけの楽譜「パート譜」というものがあります。
そのパート譜でよく見かけるのがこの「長休符(ちょうきゅうふ)」です。
何小節も休みが続くときに、太い横棒と共に休む小節数を書いて表します。
ピアノだけの楽譜で使われることは稀ですが、
色々な楽譜を弾いていくうちに出会う可能性のある休符です。
そのまとまり(楽章)丸々休み
最後の記号は、ピアノだけの楽譜ではまず見かけません。
一つの参考までに。
長い曲になると、いくつかの小さなまとまり(楽章と言います)が集まって1つの曲になっていることがあります。
そのまとまり丸ごと休みのときに使われるのが
『Tacet(タチェット)』。
実際にその時間、演奏会等ではどう過ごすのかと言うと
「ステージ上にはいるけれど、楽器は弾かない」。
これはオーケストラ(管弦楽)やブラスバンド(吹奏楽)など、
多くの楽器が一緒に演奏するようなスタイルのパート譜でよく使われます。
さっきのまとまりは演奏したけど、これは演奏しない、といった時に使われる記号です。
長休符の数字の部分に「TACET」と書かれていたり、
まとまり(楽章)の名前の横に、文字だけで書かれていたりと
表記は色々ありますが、皆同じ意味です。
この頃は、曲の一部分を繰り返し演奏する際に
「1× Tacet」と書いて、
1回目は演奏しないことを表すこともあります。
私がピアノでTacetと言われて思い浮かべるのは・・・「4分33秒」という曲。
ジョン・ケージという方が作曲した、無音の音楽です。
https://youtu.be/JTEFKFiXSx4
全部で3つのまとまり(楽章)があり、そのすべてに“TACET”と書いてあります。
演奏者は、3楽章合わせて4分33秒の間、「無音」を演奏します。
演奏する、というくらいなので、
「無音」であること以外は
普段の演奏の際にする事と同じことをします。
この曲は、演奏する楽器やその組み合わせは任意なので
別にピアノ曲というわけではないのですが、
「無音」をテーマにした曲の中では、一番有名ではないかと思います。
この曲自体は「偶然性」を試みたもの。
作曲家の意図する“曲”としての音以外の・・・
例えば、会場にいるお客さんの咳払いとか、
空調の音とか、自分の鼓動の音・・・など
その時、その場でしか聞こえない「音」との出会いに耳を澄ませてみようよ、という曲。
ケージの思想が色濃く出ており、かなり極端な例ではありますが
このような曲があることからも「音のない時間」の重要さがわかります。
そもそも、「休符」という概念があって初めて存在した曲とも言えます。
休符の捉え方
練習のとき、「休符だから飛ばしていい」と思っておられる方がいます。
休符分を待たず、端折ってしまう。
音符ばかりを大切にして、休符はないがしろにされていることが、本当によくあります。
アカペラで歌を歌っているときでも、休符を待てない。感じていない。
特に曲の最後や、フレーズ(曲の中の小さなまとまり)の終わりにある休符は無視されがちです。
これは技術的なことで言うと
「拍」や「リズム」、「テンポ(速さ)」にも関わってくることですが、
休符を感じていない演奏は焦っているようで、聴いていて心地がよくありません。
「音楽」とは時間芸術です。
うまれた瞬間に消えていく、時間の流れとともにある「音」と「無」の組み合わせです。
音だけでなく、無の時間をどれだけ感じることができるか。
これがあなたの演奏を飛躍的に向上させる、大きなポイントの1つです(^^)